多動性障害診断ソフト
ADHD診断ソフトを無料配布 滋賀の医師ら開発
(11月26日 京都新聞)
軽度発達障害のうち、注意欠陥多動性障害(ADHD)の特徴的な症状とされる不注意や衝動性をより客観的に診断する国内初のコンピューターソフト「ADHIT」を、県内の医師らのグループがこのほど開発し、ネット上で無料配布している。グループは「学校や家庭での子どもの観察情報と検査を組み合わせれば、診断の妥当性は高まり、早期治療につながる」としている。
開発したのは、湖南メディカルセンター三愛小児科(栗東市)の宇野正章医師や滋賀医科大の竹内義博教授、ソフトウエア開発会社(草津市)の川端康之氏ら。
ADHD診断には、米国精神医学会の基準が国際的に使われている。しかし、「問いかけの無視」「物忘れしやすい」などの兆候を見分ける各項目が「直訳に近く、日本人にそぐわない」との批判や、「医師の主観が入りやすい」との懸念が出ている。また、海外の検査法に、注意力の減退を数値化する持続処理課題(CPT)があるが、診断効果は一定しないとされる。このため宇野医師らは、従来のCPTを改良した精度の高い検査方法の開発を4年前から進めていた。
ADHITは、画面上に○の図形が出るとマウスをクリックし、×ならクリックしない行動が被験者に求められる。検査を多様な刺激に囲まれた実生活に近づけるため、認知を妨げるノイズとして、△の図形や周波数を変えた音も同時に出現させる。具体的には、12分間に○×を250回ずつ表示し、視覚と聴覚のノイズを100回ずつ組み合わせる。
見逃がし数やお手つき数など6つの指標で、ADHDと診断された児童群の検査データを分析したところ、他の児童群に比べ平均反応時間を除いて明らかな違いがあり、ADHITの有効性が確認できたという。同グループは、数値が非常に高ければ80%の確率でADHDの疑いがあり、低ければ、約50%の確率で疑いはないとしている。研究成果は国内外の学会で発表してきた。
宇野医師は「有効性と限界を認識すれば、保護者や医師自身の安心材料になり得る。データを蓄積し改善を加えながら、より客観的な検査にしたい」と話している。